始めまして、私は安城建築の下請けで、カラツ美装と申します。主にドライウォールのボード貼り工事を請け負っています。

今回、「職人のこだわり」に参加しないかと、お話がありました。これを良い機会に、石膏ボードの役割とか、仕事で体験した事などをお話ししたいと思います。
もしこれから家を新築される方が、今後の参考にしてもらえれば幸いかと思います。

私達の主な工事内容は、天井、壁、間仕切りなどに軽量鉄骨下地(LGS)を組んで、その上に石膏ボードを張って行く作業ですが、ここではツーバイフォー住宅のボード貼りを説明する事にします。
まず石膏ボードは厚さ12.5oの物を使用しますが、必ず天井から先に貼った後壁を貼ります。(最上階から)施工するボードの重量は、一般的な住宅で5トン〜6トン位ありかなりの重量だと言えます。

そこで「バランスよく均等に張って行く事が、建物の強度を増すポイントとなります」
ボードの施工は、出入り口、窓等にクラックが入らない様にカットします。切り込みは必ずL型か、コ型にします。
ここは一番手間のかかる作業ですが、こだわっていい所でしょう。後で述べますが作業手順はドライウォール工法も同じです。
それからスクリュードライバー(電動工具)を使用してビスを締めていきますが、ビスの大きさ、(3.8o×32o)締める間隔など、細かい間隔まで決まっています。
「一件あたり3〜4万本使用します」
職人さんはビスを口に含んで作業しますが、かなり大きいビスなので、苦労するところです。

少し話はそれますが、LGS用のビスは小さいので、天井を貼る時にうっかりすると、弾みで飲み込んでしまう事が間々あります。私も過去に一二度経験した事がありますが、上向きで作業する時は注意しないと危ない作業と言えるでしょう。冬場は、唇が荒れてとても厳しい作業です。うっかり大きな口で笑ったりすると、ピリッと唇が切れて痛い目に合う事になります。この時期はリップクリームが職人達の必需品になっています。

ボード貼り工事の大半は、ビス締め作業で新人の職人が最初に覚える仕事です。単純な作業ですが、一人前に出来る様になるには、最低でも一年はかかります。
そして、いかに早く綺麗に締めるのが職人の腕の見せ所でしょう。
「ここでのポイントはビスの頭をボード面より絶対に出さない様に締める事です」

ボードを正確に加工するのも大事な作業です。どんなに複雑でむずかしい所でもメジャーで測って、カッターナイフでカットしていきます。その際、計算通りにうまくいくとは限りません。失敗すると材料のロス、時間のロスになります。

カッターナイフで手を切って、病院のお世話になるのも、この作業です。普段から気を付ける様に注意していますが、なかなか事故がなくならないのも事実です。

安城建築さんの場合は、他の建築やさんと少し違う工法でボード貼りを行っていますので、ここで詳しく紹介したいと思います。

ドライウォール工法(石膏ボードによる継ぎ目処理工法)と言って、石膏ボードでも全てテーパーボード(パテ処理専用)の12.5o×1220o×2440oの大きくて重たいボードを使用します。

一枚で28sぐらい有りますから、施工は最低でも2人で行いますが、かなりの重労働作業と言えるでしょう。
それを壁の場合横張にします。最初に上から一段目を貼って、下の二段目はレンガを貼るように、半分ジョイントをずらします。基本的には天井も同じです。ここでも最上階の天井から順番に貼るのは同じです。
ちょっと話が難しくなりましたが、この施工方法によって建物の強度がぐんと増す事になります。
その分コストもかかる事になりますが・・・

この後の工程でパテ処理を行いますが、非常に重要な作業になります。一般建築では簡単なパテ処理だけですませるところですが、ここは絶対に手を抜けない所です。
「ボードとボードのつなぎ目は、全てテーピングしてパテ処理するのが重要なポイントになります」これによって強度と気密性の高い住宅になります。ここまでやって初めてドライウォールと言えるのです。
例えば薬品会社の無菌室や、病院の集中治療室、企業のクリーンルームなどこの工法を採用しています。

近年ではシックハウス症候群など問題になっていますが、このドライウォール工法こそが人に一番やさしい工法だと思います。

さて、話は変わりますが、私は高校を中退して職人の世界に入りました。世間では、建築業の事を3Kなどと言いますが、今では自分の天職だと思っています。
今年で職歴32年になりますが今までに十数名ほどの職人を使ってきました。その中で一人前になれたには、ほんの数名です。この事は非常に反省すべき点だと思います。
今後は、若い職人を育て続けるのが自分の使命だと思ってこれからも頑張っていこうと思います。

もし、今後現場でお会いできる事がありましたら、気軽に声を掛けて下さい。


有限会社 カラツ美装    代表  唐津 孝史